[里山とアミタケ]


白骨化したアカマツ林 東広島市 1998/2/28
(東広島市広報1998年10月号に寄稿した原稿に加筆したものです。)
 賀茂台地でキノコと言えばマツタケでしょう。 ところがこのマツタケも松枯れによる林相の変化に伴い近年すっかり少なくなってきました。 このままアカマツ林が衰退していけば、 そのうちマツタケは絶滅危惧種に指定されてしまうのではと冗談でなく心配するほどです。 このマツタケがあまりに人気の高いキノコであるがゆえに、 その影に隠れているキノコがここで紹介する「アミタケ」です。 アミタケもマツタケと同じようにアカマツ林にいわゆる「シロ」をつくります。 比較的若いアカマツ林であっも発生するので、 道路の法面等、森を切り開いた後のアカマツの若い林でもよく見掛けます。 アミタケは「イグチ科」に属しマツタケやシイタケに見られるような「ヒダ」はなく、 代わりに「管孔」と呼ばれる小さな孔が密集しています。 これが網のように見えることが 名前の由来となっています。 また加熱すると本来の黄土褐色から紫色に変色するのも大きな特徴です。
 食文化の面から見ると秋の味覚の代表としてもてはやされるマツタケと対照的にアミタケはいわゆる雑キノコ扱いされてきました。それでもこのキノコに親しみを感じる方もきっといらっしゃると思います。 広島県でもアミタケを好んで食用にする地方もあり、 別名をハリサシナバ等と呼ばれていたようです。 近年の健康食志向やアウトドアレジャーブームに乗って、 キノコへの関心も高まりつつあります。 このアミタケもいつかは秋の味覚の代表になる日がくるかもしれません。
 人間の生活様式は近年大きく変わってきました。 人と森との距離が遠くなればなるほど古里の森の様子も自然という大きな潮流の中で鬱蒼とした 原始の森へと変化しつつあります。

 一方で森は切り開かれ、その一部に若く元気のよいアカマツ林が再生しているのを見ることがあります。 そんなアカマツ林にアミタケが群生しているのを見ると、 自然の回復力の強さを実感するとともに、 私たちの暮らしと古里の森との関係はこのままでよいのだろうかと考えさせられるのです。

 この季節になると私は「アミタケ」を食べて、陰ながら「古里の森」を応援するのです。 このように森を利用して初めて森や自然環境の大切さに気がつくと思うのです。 その最初のきっかけは、無理に「マツタケ狩り」でなくても、「雑キノコ狩り」でも 十分に楽しめると思うのです。

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